ふたりとみんなのわだち。
『ギャラリートラックス』の地層をなぞる。
その土地の風を感じて。Gallery TRAXを探訪だ。
1993年に木村二郎さんと三好悦子さんによってスタートしたトラックス。
ギャラリーにとどまらないその空間を探る旅へ、出かけましょう。
トラックスの芽は、廃墟となっていた保育園から。
大阪でせわしなく働いていた二郎さんとパートナーの悦子さん。
郊外へ移ることを考えているタイミングで、知人のもとを訪れた山梨の地でそこに移り住むことを決めたそう。
『郊外暮らしは、自分たちが楽しむ分にはいいんだけど、そのときはどうしても受け身になっていて』と悦子さん。
やりたいことをひと通りやったんじゃないか、というタイミング。
そんな中で廃材などを使っていろいろな造形物をつくっていた二郎さん。
そこで、二郎さんの生み出したものを表現する場があってもいいのでは?という悦子さんの提案もあり、場所さがし。
出会ったのは10年以上廃墟となっていた保育園だった。
『すべて、おれとあなたでやるんだよ』
誰がここを改築するのかという悦子さんの質問に、二郎さんはこう答えたそう。
そのとき悦子さんは、この場を提案したことをちょっぴり後悔したとか、しなかったとか(笑)
それが1993年4月。そこからギャラリーオープンを迎えたのが同年7月。
怒涛の3カ月だったと悦子さん。家具から内装まで、すべて二郎さんのお手製。
『最初は、トイレとお風呂場を作ってもらって。そこから住み込みで作業して(笑)』
大阪時代、調味料棚やニワトリ小屋をつくってくれた二郎さんを大いに褒めていたくらいだったのにと悦子さん。
二郎さんは、それまで本格的に木工なんかやったことなかったというのがおどろきだ。
『とびらを開けると、2週に1回トラックスが変わっていたの』
悦子さんが教えてくれた。はじめは山梨県内の作家に加え、友人のアーティスト角田純氏の紹介もあり
第一線で活動する現代美術作家などが集まり、ギャラリーが動き出していったという。
「その時は、ギャラリーの扉を開けると2週間に1回ずつトラックスが変わっていたの」と悦子さん。
持ち込まれた作品の意図を二郎さんなりに解釈し、二郎さん自ら“ギャラリーまるごと”造作を行っていたという。
そういった活動がさまざまなひとの目にとまり、古材作家としてフィーチャーされるように。
廃材をつかうというスタイルは、そのころかなり画期的。
各地のファッション関係者や写真家などのクリエイターらが、二郎さんの生み出す空間に吸い込まれるよう
こぞって二郎さんのもとを訪ねに来たという。
あの頃から。若いアーティストを中心とした展示が、いまもつづく。
ギャラリースタートからおよそ5~6年経ったころ「若いアーティストを中心に展示してもらおう」と二郎さんが。
東京で活動している若いアーティストを中心に展示をはじめたという。そうなってからはじめての展示は、五木田智央氏。
そのレールは今もなお、脈々と受け継がれ、続いている。
栞さんも加わったTRAX。芽吹き、いろんな色で花が咲く。
2018年から栞さんが悦子さんのとなりに。
お客さんとして展示を見に来ていた栞さんに、ひとりで忙しかった悦子さんが声を掛けたことがきっかけだという。
「ちょっと、いまだけ台所手伝ってくれない!?」
栞さんはその日から、TRAXに3泊したとか。
「栞ちゃんは、アートの感性はもちろん、味への感覚まで素晴らしいの。」
悦子さんは栞さんの波長、感性についてご機嫌に教えてくれた。
現在、TRAXの隣でTRAX.cafeを任される栞さん。要予約のランチは、聞くところによると とにもかくにも絶品だという。
(左から悦子さん、みんなのビビちゃん、栞さん)
『毎日をゆっくり味わうことが楽しみ』と悦子さん。そらの色も、風のにおいも毎日ちがうし、それをじっくりと味わう。
ここTRAXに訪れるひとも、来てここの雰囲気を感じるだけでもう満足だ というひとも多いという。
ゆるやかな時間が流れながら、さまざまなエネルギーが行き交うTRAX。
キャンプブックの時期も展示を行うということなので、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
*** 6月のTRAX (予定) *** 高橋恭司写真展 2020年6月6日〜6月28日
この度は、TRAXの悦子さん、栞さん、ビビちゃん そして二郎さん。
お忙しい中、取材をお受けいただきありがとうございました!
Gallery TRAX / ギャラリートラックス
@gallery_trax
HP : https://gallerytrax.tumblr.com/
Address : 〒408-0017 山梨県北杜市高根町五町田1245
TEL : 080-5028-4915
TRAX.cafe
@gallerytrax.cafe
おいしいランチは要予約です!